二岐温泉  湯小屋旅館
秘湯の元祖 つげ義春が愛した「二岐渓谷」のモデル
福島県岩瀬郡天栄村  TEL:0248−84−2210

 この仙境の地に元祖秘湯露天風呂がある。これぞ私が求めていた湯宿の原点だ。その名はずばり「湯小屋」と言い、主がここに居を構えてから35年になる。今でこそ秘湯だ、鄙びた露天風呂だとか言われて素朴なスタイルが好まれているが、主がこのライフスタイルを一貫して持続してきた信念は何であろうか。今回も我々の他にもう一組しか客を受け入れていない。それは70才を超えたこともあろうがこれ以上の客には納得した対応が出来ないから、とのこと。例えば朝夕の食事はお膳を二階まで持ってきたり、露天風呂に入る順番や時間などを調整するなどだ。バブルの時代はどこの観光地も熱に侵された夢遊病者のように施設は出来るだけデラックスにして、自然を排除して人工的なものを多くしてきた。その代償は大きくて、廃墟のようなホテルが実に多い。
 さてこの辺りの事情や一人っ子の娘さんが東京に行ったまま帰ってこないこと、などを炬燵に入りながら伺っていた。すると話は自然に「会津っぽ」の律義さ、真面目さの話になった。首相になりたがらなかった伊藤正義のことや例の松平容保(かたもり)の話になった。私はいつものように矢継ぎ早に質問をしていた。じーっと黙って聞いていた奥さんがポツリと口を挟んだ、「この人は大学時代に松平さんのお孫さんと同級だったんですよ」。
「エエッー」と私は言いこの偶然に驚いた。そして私はいわれている所の宸翰(しんかん)は真実であることの証言を得た。結局の所、私の結論は「主の星さんは会津頑固党のたった一人の残党である」。さて露天風呂であるが、喩えて言うならば奥入瀬渓流沿いに露天風呂があるようなものだ。終わりかけた紅葉を夕方、夜中、早朝、朝食後とじっくりと眺め人情と自然の良さを堪能した。


▲仙境に遊ぶ
 
▲湯舟が二つ              ▲趣のある入り口

▲付近の小川まで趣がある

▲近くの大内の宿