山形県の文化遺産

山形路を訪ねて
  10月下旬の山形路は錦で埋め尽くされていた。山形県には信仰の山として鳥海山、出羽三山(湯殿山、月山、羽黒山)や芭蕉で有名な立石寺がある。また、自然にも恵まれており月山の森、朝日の森のブナ林は有名である。さらに庄内平野の富が酒田に集まり、山居倉庫、本間邸、鐙屋などになっている。

出羽三山
  羽黒山では長い石段の参道を歩いて行くと、途中のやや拓けた場所に有名な五重塔がまるで杉の巨木のように立っていた。湯殿山には出羽三山の奥の院としての御神体がある。それは今日風に言えば水酸化鉄の噴泉塔であるが、古代においては地下から温泉が出て来て、その噴出口が盛り上がっているのだから畏敬の対象と考えても当然である。この御神体を拝むためには、型代で身の汚れを拭ってから、素足で清められた通路を通ってからである。つまり俗界から離れ聖なる世界に入るための儀式ではないかと、思はれる。

 写真が撮れれば当本の表紙を飾る写真として最も相応しいのであるが、信仰の対象であるから撮影禁止である。また、芭蕉も「奥の細道」で「そうじて、比山中の微細、行者の法式として他言を 禁ず。よりて、筆をとどめてしるさず」として御神体については一切記していない。しかし、阿闍梨に求められて次の句を書いている。
  語られぬ湯殿にぬらす袂哉


湯殿山の神を参拝するために身を清める場所であったと思われる。

酒田の米倉(山居倉庫)
  この庄内米を入れる米倉は今でも使用されている、活きた民族遺産だ。その理由は倉の西側の欅により西日の当たるのが防がれているからである。先人の自然を生かした知恵が忍ばれる。また、倉と倉の間に落ちた枯れ葉の山を掃き集めていたが懐かしい風景であった。