十字軍(Crusades)

 西ヨーロッパ世界は中世を通じて絶えず外部からの圧迫・侵入に苦しめられてきた。特に8〜9世紀以来、イスラム勢力やアジア系のマジャール人そしてヴァイキングの侵入が相次ぎ、西ヨーロッパは守勢を余儀なくされ、ひたすらその圧迫に耐えてきた。しかし、封建社会が安定し、さらに発展するなかで力を蓄えてきた西ヨーロッパ世界はそれまでの守勢から反撃に転ずるようになった。

ヨーロッパの膨張
  @国土回復運動(再征服、レコンキスタ):イスラム教徒の支配下に置かれていたイベリア半島では、キリスト教    徒によるイスラム勢力をイベリア半島から駆逐する運動。11世紀より1492(グラナダ陥落)年まで。

A植民活動(東方植民):ドイツ人によるエルベ川以東のスラヴ人居住地への進出は12世紀以後盛んになる。

B聖地パレスチナ回復:有名な十字軍である。

広義には中世欧州におけるキリスト教徒の異教徒・異端者との戦い
狭義には1096年から13世紀後半にかけての7回にわたる西欧諸国のキリスト教徒による聖地パレスチナ回復のためのトルコ遠征を指す
1095年 教皇ウルバヌス2世がクレルモン公会議で遠征を宣言
十字架の記章を戦士の標識と定めた

結果
@聖地奪回の目的は達成できなかった
A東方との交通・貿易が盛んになり、西欧諸都市の興隆が促進される
Bビザンチン・イスラム・アラビアの文化・科学との接触はルネサンスを含むヨーロッパ文化にも影響を与えた
C教皇権の失墜と封建貴族の没落により王権が拡大

これらの遠征の他に1212年には少年十字軍と呼ばれるものもある