キリストの象徴クリスムについて 1:クリスムの意味 2:クリスムの変遷 3:クリスムに書かれた文章
1クリスムの意味

1.クリスムの意味
 教会の西正面(ファサード)で半円形に囲まれた所(ティンパヌム)に車輪状の彫刻がある。最も目立つところの中心部分に示されているのだから、キリストに関することに違いない。資料によるとギリシャ語によるキリストを示す
χ ρ ιστοδの初めの3文字のXPIで車輪状の骨を示し、Pの下に絡みつくSは最後の文字のδを示している。左右にあるA,ωはキリストが「私はアルファーでありオメガである(黙示録21章6節)」による。このようにこの彫刻は全てキリストを表していて、キリストを象徴的に示している。この円をクリスムと言う。クリスムはキリスト像を具体的に表すことに、抵抗があった初期キリスト教時代の名残だ。

2クリスムの変遷 @サン・ファン・デ・ラ・ペーニャ修道院
 この修道院には壁面に約20個の象徴的な図 が刻まれている。そのうち一つは車輪状のみ でクリスムの原型ではないかと想う、三つもクリスムがある。
Aハカ大聖堂
 スペインのロマネスク様式の最古の教会であ る。クリスムは二匹のライオンに囲まれてい て、ロマネスクらしい滑らかな表現で達者な 彫である。
Bサン・ペドロ・エル・ヴィエホ聖堂(ウエスカ)
 
天子が支えているクリスムはやや深彫りにな り、文字も装飾的になっている。この時代は 他の教会では人物像としてキリストを表して いる。
Cサンタ・クルス・デ・ラ・セロス聖堂(セロス):クリスムや動物の彫刻は稚拙になり、且つ最 も重要な文字の意味が解らなくなっているた めか、AWSの位置が変わっている。
Dサンチャゴ・デ・ラ・コンポステーラ大聖堂: このクリスムは完全に意味が見失われ数多く の聖像のひとつになっている。置かれた場所 もティンパヌムの外にあり、他の彫刻群の装 飾になっている。
3文章の意味 3.ティンパヌムに書かれた文章の意味
 Aのハカ大聖堂について
 ・クリスムの円の周り:「これを見る人は、彫刻の中で次のことを識別するように注意しなけれ  ばならない。Pは父を示している。Aはその息子、その他の文字は聖霊を示している。三つは、  実際は唯一で、同じ主である」と、キリストは神や聖霊と同一。即ち、三位一体を表している 二匹のライオンの上の銘文:右のライオン「強力なライオンは、死の王国を打ちのめす。」左  のライオン「ライオンは、その脚のもとにひれ伏す人を知っている。そしてキリストは、そを  祈願する人である」
 Cのサンタ・クルス・デ・ラ・セロス聖堂(セロス)について
   クリスムの円の周り:「われは、入るに易しい門である。信者よ、われを通って入れよわれは生  命の泉である。ぶどう酒よりも、われによりて渇きを癒せよ、聖母の至福の神殿に入るなんじ  らすべてよ。」ライオンの足元の銘文:「キリストに祈願することが出来るためには先ず改悛せ  よ」と、天国への門としてのキリストの性格を直接的に表している。