東口家庭園  堺港を象徴的に表す
大阪府堺市 非公開
当庭については重森が東口氏に記した内容をそのまま記載する
  百舌鳥の地は、仁徳量を始め、今日尚多くの大古墳が散在している。上古から奈良朝にかけての文化の発展地である。その一角に東口氏の邸宅が出来た。私はそうした意味もあって、この地に今日の文化財を作るという気持ちでやった庭である。このふるい文化財のある土地が無上に大切である。
  この地方の古い文化財はいうまでもなく堺港から来ている。仁徳稜その他の大古墳はそれを有力に物語っている。近世における茶の湯の発展も堺港あっての業績である。従ってこの地では海を忘れては文化の存在がない。そこでこの庭は海をテーマとしたものである。しかし海をテーマとしたからといって、海景を写実的に構成したのではない。あくまでも抽象性を強調して、現代という感覚を上代文化に連結した試みであった。この庭ではサツキやツツジやツゲの類を大刈込的に扱って、これを州浜的な平面の構成と立体の上に盛り上げ、白砂と赤砂による地紋の交錯のよって、明るいこの地方のローカルを色彩的に強調し、これに数箇所の蓬莱式の石組と老松を配した神仙延年の感覚を表現して、上代と結んだつもりである。
  また、この邸宅は庭を観賞するためのように作られたかのようである。設計士と重森が最初の段階から打ち合わせたそうである(設計は京都の佐藤設計)。寝殿造りと庭園が不即不離であるように、小堀遠州においても然りである。

▲邸宅は庭に向かって凹型になっていて、凹んだ部分のテラスからの観賞は清々しい気持ちになる。

▲州浜と蓬莱山はうねる堺港と停泊している船舶の様子とダブってくる

▲テラスを移動すると巨石による景色の変化が楽しめる

▲手前の石と中央に直線的に並んだ石が有機的に結びついている

▲石組の面白さは立体造形感覚の鋭い重森ならではの景色

▲迫力のある巨石ならではの造形

▲庭の中からの視点

▲裏庭は一転して白砂と黒砂のコントラスト。其の境はコンクリートによる州浜模様

▲表庭部分にある門と邸宅を結ぶ敷石