栄光寺 重森三玲 昭和35年 龍門庵
香川県小豆郡小豆町安田1621  ?0879-82-0786

3室からなる総桧皮葺からなる建物に、2つの茶席がある。この茶室を仕切る襖は何と、壁襖という土壁である。この重たい土壁の襖を取り去ると、10畳半台目の一席に変身するのである。
 重森は大徳寺玉林院の蓑庵のすさ壁(土壁表面を藁が現われたままにする手法)の再現に努めた。自宅の無字庵に始まり、光明院のら月庵、そして当庵である。特に当庵の場合は襖に土壁を塗るのだから大変な苦労が伴ったが、重森と佐藤嘉一郎氏の努力の甲斐あって、侘寂の一語に尽きる茶室が出来上がった。

 そもそも、藁を切って壁に入れるのは壁のひび割れを防ぐ目的で下塗りとして使われた。所がその風合いが鄙びているため茶室の壁に使われた。その代表が上記玉林院の蓑庵である。
 重森はこの侘寂の調子を好み現代に再現しようと試みた。それが旧重森庭の「無字庵」である。
ところが、当庵の場合は壁ではなく襖にそれを再現しようとしたのである。わずか数センチの襖に塗っても、剥離がする、ひび割れる、反りかえるなどの技術的な問題が付きまとう。しかし重森と佐藤嘉一郎氏は工夫を重ねてその手法を完成させた。

 単に塗ったというだけでは意味がなく、その風合いが蓑庵のような、250年間で培われた歴史の風合いを、鏝で仕上げた直後から発現しなくてはならないからだ。


 この茶室は重森の理想の世界が表現されている、貴重な宝である。


寒霞渓をイメージした石組

石は小豆島のもの

外待合

本堂に近い茶室

微妙に異なる風合い


上記写真の右側の襖

茶室中柱下地窓付近の?壁

土壁の襖の裏側(鎖の間、または鞘の間とも言う)は斜めに仕切られた大胆な意匠

飛び石の周りは朱色のセメントだ

山門より本堂への参道にも重森の意匠の敷石


山門前の庭は重森の弟子である岡本氏の作品

庫裡と茶室の狭い場所を利用した庭(岡本氏の作品)
軒内の丹波鞍馬石の敷石は豪快でかつ美しい
    総合TOP  ヨーロッパ紀行TOP 日本庭園TOP