湯宮神社の磐座 湯田中温泉
  温泉で有名な信州湯田中にある湯宮神社は信仰の対象としての岩組みである。古来日本人は永遠不滅の巨石には神が住まわれたいるとの信仰があった。ことに山の頂上や中腹に巨石が林立していれば、大半は信仰の場として尊敬されてきた。ここ湯宮神社はまさにそのセオリーどおりである。この神社の磐境は尖がった山頂いっぱいに巨石が林立している。これを奇跡と言わずして何といおうか。高さはさほど無いが急峻な山ゆえ人工的に配置したものとは思えない。これぞ日本神道の源流だ。なおこの地はいわずと知れた温泉場で近くにはサルの入浴で有名な地獄谷温泉がある。温泉は人工的なエネルギーを使わずに暖かな湯が噴出するのだから、我々の生活に大変有益であった。故にこの地に温泉を祭る「湯宮神社」が祭られていることはごく自然なことである。
  庭園の源流としてみなすと
  自然の巌が頂上に所狭しと転がっている。これを観賞の対象として楽しむことが出来るであろうか。私は有無を言わずにここの雰囲気に圧倒された。自然の巌が点在するだけであるのに。では芸術とは一体なんであろうか。自然の状態のほうが感激するのであれば、人工的な造作はなんと空しいものであろうか。日本人が自然を崇拝する気持ちが伝統的に培われてきたから感動するのであろうか。では何の先入観も無い外国人ならばどのような感じ方をするのであろうか。
  人工的な庭園でこの神社と雰囲気が似ているものとしては、先ず徳島県にある旧阿波国分寺庭園がある。鋭角の巨石が天を衝いて林立している。すさまじいとしか形容できない。次に挙げるならば重森三玲先生の遺作となった松尾大社(京都)の上古の庭ではなかろうか。この神社にも本殿背後の松尾山に巨大な磐座があり、大山咋神(おおやまぐいのかみ)、中津島姫命(なかつしまひめのみこと)を祀っている。上古の庭はこの祭神に因んで磐境を想わせる巨石が縦横無尽に林立している。まさに「神々の遊び」である。
  今回この神社を尋ね磐座、磐境と庭園に着いて考えさせられた。帰途付近にある遠見温泉の露天風呂に行き展望の露天風呂を楽しんだ。

▲神社の裏にある霊峰岩菅山の頂上に巨石がぎっしりと林立している。

▲頂上真下にくると今にものしかかってきそうな巨石の迫力に圧倒される

▲頂上には巨大な磐座が鎮座  大巳貴命と須勢理比売命

▲南側に突き出た岩は少彦名神を祀る。神力により一点を押すだけで動くことから通称「動き岩」

▲上記拡大

▲通称「胎内くぐり」といわれ、磐座の間を潜り抜けることで生まれ変わるという
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